ニーズ合致、外出支援好評 常陸太田・高倉地区(茨城新聞クロスアイ)

常陸太田市高倉地区の外出支援サービスが好評だ。開始から3カ月、顔見知りの住民が運転する安心感や、ニーズに合った運行が支持され、利用率は想定を上回る。公共交通の空白地を対象とした有償運送制度で、法人格を持たない自治会が運行主体となるのは県内で初めて。高齢化が進む地方の新たな交通手段として注目される。 (常陸太田支局・長洲光司)

「お待たせ」「よろしくね」。12日午前9時、運行拠点の高倉交流センターを出発した益子富夫さん(64)が、事前に予約した菊池洋子さん(76)宅に到着、笑顔であいさつした。

乗車を手助けしながら、「今週は天気いいね」「稲刈りも大丈夫そうだね」。途中から別の女性も同乗、車内は農作物の出来や世間話で一層にぎわう。診療所に着くと、混み具合を見て迎えの時間を予測、次の目的地に向かった。

利用者が不安がったり、気兼ねしたりしないよう、「自然に振る舞うようにしている」と益子さん。月2回の通院で利用する小室きみゑさん(81)は「親子のように親切に接してくれる。(運行する)火曜日が来るのが楽しみ」と笑う。

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高倉地区は常陸太田市北部の中山間地で、高齢化率は5割を超える。タクシー事業所はなく、バス路線は幹線道路が中心。運転免許を持たない高齢者の移動手段の確保が課題だった。

運営するのは、自治会や老人クラブ、子ども会育成会などでつくる「高倉地域づくりの会」。

高倉地区の住民を対象に毎週火曜日の午前9時~午後5時、同地区を含む水府地区で運行する。片道1回300円。原則前日までに予約を受け、63~70歳の男性9人が交代で、無償で運転手を務める。

車両は国の地方創生加速化交付金を活用して購入した。料金はガソリンや自動車保険などに充てられ、不足分は同会の会費と市の補助で賄う。

6月13日の開始後、今月12日までに13日間運行し、計55回の利用があった。当初1日当たりの利用回数を約2回と見込んだが、2倍を超える4・2回となるなど快走ぶりを見せる。

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利用者は高齢の女性が占め、診療所や市水府支所、金融機関への送迎が多い。

豊田陽子さん(69)は、老人福祉施設に入所する母親との面会に利用する。路線バスだと本数が限られる。市街地まで行く毎週金曜日の乗り合いタクシーと比べ「時間のロスが少なくて助かる」と話し、選択肢が増えたことを歓迎する。

駅や商業施設のある中心市街地が運行エリア外のため、当初は利用者不足が懸念されたが、「認識の違いがあった」と運行管理の佐川憲一郎さん(65)。エリアが限られることで、逆に近距離移動の需要に応えている。

サービス導入を提案した市は「住民のニーズに合っていたということであれば喜ばしい」とする。

市内では、路線バスのルートや料金などを見直す公共交通網の再編が進む。年度内には道の駅ひたちおおた(同市下河合町)を拠点に自動運転の実証実験を行う予定。里美地区では以前からNPO法人や地元商工会が公共交通空白地有償運送に取り組んでいる。