特措法2年 空き家対策、道半ば 「特定」指定10市町(茨城新聞クロスアイ)

危険な空き家を自治体が強制撤去できるよう定めた空き家対策特別措置法の施行から2年が経過した。今月に入り石岡市が強制撤去に踏み切ったものの、倒壊の恐れなどがあるとして「特定空き家」を指定した県内の自治体は10市町(1日時点)にとどまる。特措法に基づく対策計画づくりが遅れている自治体もあり、空き家問題を巡る取り組みは地域でばらつきが生じている。

「周辺の建築物や通行人に危険となる恐れがあり、その危険度も切迫性が高いため、解体撤去に着手します」。12日朝、JR石岡駅に近い市街地の一角。壁や屋根が壊れた空き家の前で石岡市の担当者が「代執行宣言文」を読み上げると、作業員が重機を手際よく操り取り壊しを始めた。

所有者不明のまま行政が強制撤去する「略式代執行」で、県内初。撤去費用約102万円は税金で賄う。担当者は「市民の安全が最優先だが、代執行はあくまで最終手段。ただ市内には千戸以上の空き家があり、今後も同様の例が出てくるかもしれない」と複雑な表情を浮かべた。

隣地に住む男性は「トタンが吹き飛んできたこともあったので、ひとまず安心」といい、「今後も積極的に取り組んでほしい」と行政の役割に期待した。
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人口減少の影響で空き家は増え続けている。総務省の調査(2013年)によると、賃貸・売却用や別荘用などを除く県内の空き家は6万7千戸に上る。このうち約3割は腐朽や破損があり、対応が急がれる。
鹿嶋市は昨年12月、特措法に基づき、固定資産税などの優遇が適用されなくなる「勧告」を1件出した。通学路に面する建屋で、看板や外壁などの落下が懸念された。所有者は最初の指導から1年以上たってようやく応じ、現在は指定の解除に向けて経過観察中だ。

古河市は4月までに計109軒を特定空き家に指定。指導により36軒で改善につながったが、残りは持ち主が所在不明だったり、相続人が多く権利関係が複雑だったりするほか、所有者から「経済的に厳しい」と断られる例もあり、対応に苦慮しているという。
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国土交通省によると、3月までに特措法に基づく対策計画を策定した県内の自治体は11市町村。本年度末には32市町村に増える見込みだが、県が目標とする全44市町村には届かない。県によると、県内では10市町321件が特定空き家に指定されている。
県内最多の2万2千戸の空き家を抱える水戸市は、本年度からようやく実態調査に着手。対策計画は18年度にまとめる予定で、ほかの自治体に比べるとやや遅れ気味だ。4月に「空き家空き地係」を新設したものの担当者は2人。「『雑草が伸び放題』『枝が張り出してきた』など、市民から通報のあった空き家への対応に日々追われているのが実情」という。

一方で先進自治体の笠間市の場合、二つの部署にまたがっていた適性管理と活用促進の業務を、昨年から「空き家政策推進室」に統合。「部署間で責任を押しつけ合うことなく、効率的に空き家政策を進められるようになった」とする。
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撤去費用の負担を回避する新たな試みも進む。ひたちなか市は8月に特定空き家を1軒指定した。火災に遭った家屋で損傷が激しいため、将来的に倒壊の恐れがあるが、親族らは相続を放棄。このため石岡市の事例と同じ代執行か、民法で定める「財産管理人制度」を活用するか、比較検討中という。
同制度の場合、裁判所に財産管理人の選任を申し立て、土地の売却で費用を回収する狙いがあり、担当者は「税金投入はなるべく避けたいが、安全を考えればスピード感も大事。なるべく早く答えを出す」。

笠間市も、代執行ではなく財産管理人制度の活用を優先する方針だ。現在、特定空き家に24軒を指定。担当者は「費用回収が見込めない代執行を連発しては所有者のモラルハザード(倫理観の欠如)を招く」と指摘。同制度の活用に関し「費用を全額回収できない可能性はあるが、行政側としては少しでも負担を減らさないといけない」と話す。(戸島大樹)

★空き家対策特別措置法